食品に日用品、あらゆるモノの値上がりしている厳しい2023年。
鉄道会社においても昨年以降、各社の値上げが話題となっています。
今回は全国各社の運賃改定動向をまとめ、なるべくお得に移動できる方法を距離別に考えてみました。
以下が記事内容です。
・現在公表中の、2022年以降の鉄道会社各社の運賃・料金改定
・鉄道会社各社が運賃改定に至る背景
・運賃、料金値上げが行われる中、お得にきっぷを購入する方法
※本記事は2021年末に初回作成、2023年1月31日時点の情報まで更新した内容です。
誤りやお気づきの点があればお知らせください。
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JR・私鉄(鉄道会社)の運賃・料金改定まとめ

現在(2023年1月31日現在)までに公表されている鉄道会社の運賃・料金改定、見込みは以下の通りです。
JR各社の運賃改定
※会社名をクリックするとプレスリリースまたは詳細ページにジャンプします。
会社名 | 運賃改定内容 | 改定時期 | 改訂理由 |
JR北海道 | ①指定席特急料金最繁忙期の設定(利用時期に応じた4段階の料金設定) ②2022年4月1日乗車分以降「快速エアポート」「くしろ湿原ノロッコ号」「富良野・美瑛ノロッコ号」の座席指定券値上げ(530円から840円) | 2022年4月1日 | ①ピークシーズン混雑の分散化 ②経営環境の変化 |
JR東日本 | ①新幹線・特急列車グリーン料金、グランクラス料金見直し(値上げ) ②指定席特急料金最繁忙期の設定 ③首都圏新幹線含む「電車特定区間のみ利用する運賃」10円値上げ ④オフピーク定期券 | ①②2022年4月1日 ③2023年3月頃~ ④2023年3月18日 | ①成長・イノベーション戦略再構築 ②経営体質の抜本的強化 ③駅バリアフリー化に向けた費用確保 ④社会で高まっている3密回避や混雑緩和への強いニーズを運賃に反映 |
JR東海 | ①指定席特急料金最繁忙期の設定(値上げ) ②普通旅客運賃10円(値上げ) 通勤定期運賃1か月300円~6か月1,800円加算 | ①2023年4月1日乗車分 名古屋地区2024年4月1日、東京地区2023年3月、関西地区2023年4月1日 | ①長期連休中の混雑緩和 ②鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
JR西日本 | ①新幹線グリーン料金、グランクラス料金見直し(値上げ) ②関西5府県「特定区間運賃」10-40円値上げ ③新幹線のぞみ・みずほ指定席特急料金110~420円(値上げ) ④在来線特急料金改定 | ①2022年4月1日 ②③④2023年4月1日 | ①②③お客さまのご利用状況及び経営環境の変化 ④コロナ禍の厳しい経営状況の長期化やデジタル化の進展 |
JR四国 | 四国内全線対象に平均12.82%値上げ申請 定期が25.55%、定期外が12.51%。特急料金なども5.13% 初乗り運賃 170円から190円に | 2023年5月20日購入分 | 経営体質の強化 |
JR九州 | 在来線特急料金の値上げ(値上げ幅は平均40%)。値上げ率最も高い25キロまでの距離の場合、現行料金310円に対し、新料金500円で値上げ幅61%。 | 2022年4月1日乗車分 | 新型コロナ拡大による経営状況の悪化 |
これまで具体的な運賃改定内容を明らかにしていなかったJR東海も2022年11月17日、ついにバリアフリー整備計画に伴う値上げを公表。その他、新幹線特急券料金値上げに伴う値上げの検討を明らかにしています。
JR間にまたがる内容としては、JR東海・西日本・四国・九州の4社の特急列車(新幹線含む)において、シーズン別の指定席特急料金を改定し、利用時期に応じた4段階の料金設定の開始が大きな変化。
2023年4月1日乗車分より適用となりますが、お盆や冬休み・GWなど最繁忙期に移動する人にとっては、実質200円の値上げ。
2022年10月26日のJR東海ニュースリリースが参考になります。
私鉄各社の運賃改定
※会社名をクリックするとプレスリリースまたは詳細ページにジャンプします。
会社名 | 運賃改定内容 | 実施(予定)日 | 改訂理由 |
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東急 | 改定率は10数%とし、実質的な増収率は10%未満を想定 初乗り運賃は10円程度値上げ(きっぷの運賃:130円⇒140円) | 2023年3月18日(2022年4⽉8日認可 “出展:国土交通省”) | 大手民鉄16社でトップレベルの高水準な安全設備を維持。テレワーク定着による定期券利用大幅減少、コロナ前の水準に戻らないとした運賃収入の確保 |
小田急電鉄 | ①小児運賃低廉化(小児ICカードで小田急線利用時、1乗車につき50円。 最も高い小田原・新宿間445円に対して、395円の値下げ) ②特急料金改定 (平均改定率22.2%値上げ) ③全路線普通運賃10円値上げ | ①2022年3月12日 ②2022年10月1日 ③2023年3月18日 | ①子育て需要の需要喚起、子育てしやすい沿線を目指した取り組みの一環 ②特急専用車両による全席指定制の 快適な移動サービス等を維持するため ③鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
京王電鉄 | 初乗り運賃130円から10円値上げ 改定率十数%程度値上げ 通学定期据え置き | 2023年秋頃 | 車内の安全確保の費用 (詳細検討中) |
東京メトロ | 全路線普通運賃10円値上げ | 2023年3月頃 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
西武鉄道 | 全路線普通運賃10円値上げ | 2023年3月頃 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
東武鉄道 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月600円~6か月3,240円加算 特急料金改定 | 2023年3月18日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
相模鉄道 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月600円~6か月3,240円加算 | 2023年3月頃 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
京浜急行 | 改定率10.8%の値上げ(運賃10.7%、通勤定期11.9%) ただし遠距離ほど改定率を低くし、41km以上は値下げ (品川~三崎口は現行950円から740円に) | 2023年10月(予定) | 経営環境の変化において、安心安全継続に不可欠な既存設備の維持管理、安全性向上、ホームドア等の整備を進めていくため |
新京成電鉄 | 京成津田沼駅と北習志野駅相互利用区間の特定運賃廃止 (おとな切符運賃が170円から180円に値上げ) | 2023年3月18日 | 新型コロナウイルス感染症の影響による事業環境の変化 |
静岡鉄道 | 初乗り運賃20円値上げ(120円から140円)、各キロ20円加算 平均改定率(定期外10.8%、定期14.5%) | 2023年4月1日 | 施設の老朽化や安全対策の高度化などにより設備維持の費用増加、人口減少・コロナ影響による輸送人員減少 |
遠州電鉄 | 初乗り運賃20円値上げ(120円から140円)、それ以降の区間8.1キロ以内の区間で10円値上げ | 2022年2月1日 | バリアフリー化や車両老朽化の更新、新型コロナによる利用者減少 |
北総鉄道・京成電鉄(京成電鉄は成田空港線のみ) | 現行運賃を平均15.4%値下げ。定期外では中距離(12~14キロ)に最大100円(ICカード利用時は105円)引き下げ。初乗り普通運賃は20円値下げとなる190円 | 2022年10月1日 | 1972年5月の北総開発鉄道設立以来の累積損失解消見込み(2022年度)。 ポストコロナにおける沿線自治体のまちづくり施策・利用者の声を反映 |
あいの風とやま鉄道 | 値上げ(普通運賃と通勤定期約6%、通学定期約2%) | 2023年4月1日 | 鉄道設備老朽化に伴う維持費の増加、新型コロナ・沿線人口減少による利用者減少 |
北陸鉄道 | 値上げ(大人普通運賃11.3%・一律40円加算、通勤通学定期改定率11%) | 未定 | 鉄道設備老朽化に伴う維持費の増加、新型コロナ・沿線人口減少による利用者減少 |
しなの鉄道 | 東日本旅客鉄道株式会社、えちごトキめき鉄道株式会社間での乗り継ぎ割引廃止 (屋代駅と長野駅運賃350円→430円に値上げ) | 2023年3月18日 | コロナ禍を乗り切る経営改善 策 |
福井鉄道 | 福武線値上げ検討 (未定) | 2023年以降 | 新型コロナウイルス禍の影響などで赤字幅が拡大しているため |
京都市営地下鉄 | 地下鉄7%、市バス8%程度値上げ | 2024年度頃 | コロナ禍で利用客が大幅に減少したことによる経営難 |
京福電気鉄道(嵐電) | 値上げ(普通運賃大人220円・子供110円からそれぞれ250円・120円)、通勤定期1000円増 | 2023年4月1日(予定) | 2024年度に西大路三条・山ノ内・太秦広隆寺の各停留場バリアフリー化、回生電力貯蔵装置新設 |
近鉄 | 値上げ(平均改定率17%、通勤定期18.3%、通学定期9.2%) 初乗り運賃160円から180円に値上げ | 2023年4月1日 | 鉄道設備老朽化、バリアフリー整備・防災整備に伴う維持費の増加 新型コロナ・沿線人口減少による利用者減少 |
大阪メトロ | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月380円~6か月2,050または2,060円加算 | 2023年4月1日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
京阪電鉄 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月370円~6か月1,990または2,000円加算 | 2023年4月1日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
阪急電鉄 阪神電車 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月380円~6か月2,050または2,060円加算 | 2023年4月1日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
山陽電鉄 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月360円~6か月1,940または1,950円加算 | 2023年4月1日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
神戸電鉄 | 全路線普通運賃10円値上げ 通勤定期運賃1か月380円~6か月2,050または2,060円加算 | 2023年4月1日 | 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用した料金設定ならびにバリアフリー等の整備計画 |
泉北高速鉄道 | 普通運賃(大人)10円値上げ 普通運賃(小児)IC利用時は、線内一律50円 通勤定期(大人一か月410-420円値上げ | 2023年10月1日 | 車両・設備の更新等の安全に関する投資財源を確保のため 子育てのしやすい環境を提供するため |
箱根登山鉄道 | 値上げ (平均改定率10.9%、通勤・通学定期9.0%、定期外運賃11.1%) 初乗り運賃140円から160円に値上げ | 2022年10月1日 | 輸送人員の減少 設備維持管理コスト上昇 |
伊豆箱根鉄道 | 値上げ (平均改定率14.5%、定期20.4%・定期外10.3%) 初乗り運賃140円から160円に値上げ | 2023年4月1日:駿豆線 | 鉄道設備老朽化、バリアフリー整備・防災整備に伴う維持費の増加 新型コロナ・沿線人口減少による利用者減少 |
南海電鉄 | 初乗り運賃20円値上げ(160円から180円)、最大40円加算(16km以上) 平均改定率10.0% 難波~中百舌鳥間は340円→特定運賃350円 | 2023年10月 (予定) | 沿線人口減少・コロナ影響による収入減の中で、継続的な設備投資(連続立体交差事業や車両新造の推進、駅施設の美 装化)を行うため |
西鉄 | 値上げ (1乗車当たり10円加算) | 2023年3月27日 | 「鉄道駅バリアフリー料金制度」によるバリアフリー設備の整備推進 |
広島電鉄ほか地元7社 | 均一運賃220円に値上げ(190円・200円運賃→220円)、白島線130円→160円 (定期外15.8%~、定期15.7%~) | 2022年11月1日 | 収支改善による経営基盤の強化と バリアフリー化の推進 |
過去の運賃・料金改定実績は国土交通省のHPから確認可能です。
これ以外にも、伊予鉄道や西鉄は2021年に運賃改定(値上げ)を実施。
そのほか福井鉄道は2023年度以降10%程度の値上げ、名古屋鉄道は時期未定ながらも運賃改定(値上げ)の検討を表明しており、多くの鉄道会社が今後値上げに向かう方針は疑いようも無さそうです。
値上げに負けず、おトクにきっぷを購入する方法

こんな時だからこそ、少しでも安くきっぷを買う方法を考える必要がありますよね。
鉄道会社で働いていた経験から下記の順で調べていくことをお勧めします。
1. 近距離の場合(数キロ~数十キロ)
近距離の場合はあまり選択肢がありません。
あっても10円20円の違いですので、金券ショップがあればラッキーくらいの気持ちで大丈夫です。
通院や通勤で同じ区間を月に10回程度以上往復する必要のある方は、通勤定期券の価格も調べましょう。
2. 中距離の場合 (数十キロ~百キロ超)
路線内一部区間のフリーパスや、他の観光施設の入場券割引とセットになったお得な切符を各社販売しているのがこの区間です。
普段パンフレットや窓口周りを見ることなく改札口に直行する方は、パンフレットを確認してみると意外に安くきっぷが買えることもあるのでおすすめです。
区間が長い日帰り旅の場合、普通にきっぷを買う金額の半分くらいで往復できたりもします。
JRを利用の場合は「乗車券分割プログラム」を活用し、正規運賃に対して、運賃を分割することでどの程度安く購入できるかを調べましょう。
例
「静岡」⇒「東京(山手線区内)」 | キロ数 180.2キロ | 運賃3,410円 |
「静岡」⇒「戸塚」 「戸塚」⇒「東京」 | キロ数 139.3キロ キロ数40.9キロ | 運賃2310円 運賃730円 合計3,040円 (正規運賃との差額370円) |
このように静岡から東京のきっぷを買う場合、戸塚までのきっぷを購入し、東京で乗越精算をすることで合計3,040円の支払いですむという計算になります。
※片道の営業キロが100キロ以内の乗車券で乗り始めた場合、区間変更扱いとして正規運賃との差額を支払うこととなるため、対応不可。
静岡⇒戸塚の場合は100キロを超えているため、打ち切り計算として戸塚⇒東京分を支払うことで済む。
詳しくは旅客営業規則第7章 乗車変更等の取扱いを参照下さい。
3. 長距離の場合 (数百キロ~)
長距離になると私鉄ではなく、JRが主な鉄道交通機関になります。
移動方法や目的地によってさまざまな方法で割引を受けられますが、きっぷの使い勝手を考えて整理しました。
まずはフリーきっぷや周遊きっぷ。
往復分の金額以下で、目的地周辺の鉄道や観光施設利用までカバーできる企画乗車券が多く存在しています。
「発着地 + フリーきっぷ」の検索がおすすめ。
株主優待券も株主の方・金券ショップで安く購入できる方にはおすすめ。
期限は1年1か月(毎年6月末に切れます)と決まりがあるものの、JR東海を除けばかなりの割引率ですね。
会社名 | 株主優待券の特典 |
---|---|
JR東日本 | 運賃・料金40%割引 (1枚のみ利用可) |
JR東海 | 片道運賃・料金10%引き、2枚(20%)まで利用可能 |
JR西日本 | 片道お一人様の運賃・料金が50%割引 (1枚のみ利用可) |
JR九州 | 片道お一人様の運賃・料金が50%割引 (1枚のみ利用可) |
新幹線を良く利用される方にとっては、金券ショップよりもエクスプレス予約!
距離にもよりますが、1往復指定席を予約すれば、元が取れる年会費に対して、常に自由席料金かつスムーズなタッチ乗車ができます。
慣れたら元には戻れません。
特に、2022年7月13日JR西日本が公表した新幹線(みずほ・のぞみ)指定席特急料金の見直しについて、エクスプレス予約の場合は据え置きとの情報あり、今後需要は高まっていくでしょう。
※新幹線回数券は2022年3月末で販売終了となりました。
さらに片道600キロを超える移動をされる方は必ず往復乗車券を購入しましょう。
例
「神戸市内」⇒「東京都区内」 | キロ数 589.5キロ | 運賃18,920円 (往復)、特急券は別 |
「西明石」⇒「東京都区内」 | キロ数 612.3キロ | 運賃17,620円(往復)、特急券は別 (1,300円も安くなる) |
知っている人は多いと思いますが、運賃計算キロが500キロ台後半となる場合、必ず少し遠くの駅までのきっぷを買って往復割引で安くなるかをチェックすると良いです。
上の例は東京・神戸の移動ですが、新神戸⇔西明石の運賃は放棄することができるため、乗車券だけ西明石を購入しておくと1300円も安く購入できます。
東京・新大阪の場合も、西明石まで購入した方がわずかに安くなります。
その他、このような長距離移動の場合、日本旅行のJR+宿泊券商品やHISのパッケージツアー、ニーズツアーなど、旅行会社のツアーパックで新幹線も利用できたりします。
あらかじめ決めた乗車時間の変更ができないことが多いため、発着の電車時間が決まっているというお客様におすすめ。
融通利かない旅行がイヤな場合、通常通りきっぷを購入する方がよいです。
2022年~2023年 JR・私鉄の鉄道運賃改定まとめ

今回はJR・私鉄各社で相次いで行われる運賃・料金の値上げの動向ときっぷをお得に購入する方法をまとめました。
今回紹介した会社以外にも、今後新型コロナ影響による旅客数減少・設備修繕や更新により多くの会社が値上げしていく方向であることはほぼ確実。
乗車する側の私たちとしては、少しでも安く電車に乗れる方法を把握し、きたる値上げ時代に備えておきましょう。
