海外営業・マーケティング担当の方は、海外法人や顧客とのやり取りの中で「もっと自社製品の需要が正しくわからないものなのか?」と思ったことがありませんか?
実は海外では製販部門をつなぐ「需要予測」を専門で担当するスタッフがいるなど、日本よりもはるかに多くの研究が行われてきました。
この記事では、日頃海外顧客や販売会社と英語でやり取りする製造業出身・元海外駐在員の筆者が、製造業の需要予測について解説。
あわせて、関連する英語・用語についても紹介します。
興味のある項目があれば目次からジャンプ、またキーボードの「Ctrl + F」で用語検索に活用してください。
製造業で必要な需要予測6つのタイプ
- パッシブ需要予測
- アクティブ需要予測
- 短期予測
- 長期予測
- 外部マクロ予測
- 内部ビジネス予測
製造業が用いる需要予測の種類は、大抵の場合以上の6つに当てはまります。
「需要予測」という言葉は使わず、中期計画や月次データとで表現されることもあるかもしれませんが、内容としては以下6つに当てはまる!と思われる方もいるでしょう。
パッシブ需要予測 (Passive demand forecasting)
- 特徴
-
過去の販売データを使用して将来を予測する最も基本的なタイプ。
季節的な需要や変動がある場合に有益。
- 活用方法
-
安定性を重視する企業に適しており、統計的手法や経済動向の研究を必要としないため、簡易に利用可能
アクティブ需要予測 (Actve demand forecasting)
- 特徴
-
マーケット調査やマーケティングキャンペーン、拡大計画を考慮した予測モデル。
成長段階にある企業や新規参入企業に適している。
- 活用方法
-
外部要因を考慮し、市場セクターの成長予測やサプライチェーンの効率化に役立つ。
短期予測 (Short-term projections)
- 特徴
-
次の3〜12ヶ月の需要を対象とする。
ジャストインタイムのサプライチェーン管理に有用で、リアルタイムの売上データに基づいて予測を調整できる。
- 活用方法
-
頻繁に変化する製品ラインアップを管理する企業や部門が活用する。
長期予測 (Long-term projections)
- 特徴
-
1〜4年先の需要を予測。ビジネスの成長軌道を形成することに焦点を当てる。
売上データや市場調査に基づくだけでなく、目標志向的な予測手法。
- 活用方法
-
マーケティング、資本投資、サプライチェーンの計画に役立ち、将来の需要に備える
外部マクロ予測 (External macro forecasting)
- 特徴
-
広範な経済動向を考慮した予測。
これらの動向が目標に与える影響を分析し、対応策を立てる。
- 活用方法
-
安定性を重視する企業にとっても、外部市場の影響を予測することは重要であり、サプライチェーンに直接影響を与える要因も考慮。
内部ビジネス予測 (Internal business forecasting)
- 特徴
-
企業の内部能力に焦点を当てた予測。
成長を遅らせる制約や組織内の未利用領域を明らかにする。
- 活用方法
-
ビジネス財務、現金残高、利益率、サプライチェーンの運用、人員などを考慮し、実現可能な予測を行う
製造業が使う需要予測の手法5選
- トレンド予測
- 市場調査
- セールスフォースコンポジット
- デルファイ法
- 計量経済学的手法
製造業で使われる需要予測の手法5つです。
過去のトレンド・季節性を利用した需要予測は年間計画や中期計画に。
市場調査やデルファイ法は新規商品立ち上げ時の開発会議で利用されることもあるのではないでしょうか。
近年ではSalesforceでの管理も海外法人ではかなり活用が進んでいますよね。
※代表的な需要予測モデルについては用語集で説明していますので、目をとおしてみてください。
トレンド予測 (Trend projection)
- 特徴
-
過去の販売データを使用して将来の売上を予測する最もシンプルで直接的な方法。
- ポイント
-
過去の異常数値・異常事象を考慮して将来の予測を調整することが重要。
市場調査 (Market research)
- 特徴
-
アンケートをはじめとした顧客調査データに基づく予測方法。
内部の販売データから得られない貴重な洞察を提供する。
- ポイント
-
顧客のデモグラフィックデータを収集し、将来のマーケティング活動のターゲット設定に役立つ。
データ収集に時間と労力を必要とするが、特に顧客を知り始めたばかりの新興企業で役に立つ。
セールスフォース複合 (Sales force composite)
- 特徴
-
営業チームのフィードバックを活用して顧客の需要を予測する方法。
- ポイント
-
営業チームが顧客の要望や製品トレンドについての貴重な情報源であるため、顧客の需要を予測する上で重要。
デルファイ法 (Delphi method)
- 特徴
-
専門家の意見を活用した質的予測手法。
外部の需要予測の専門家と熟練したファシリテーターを巻き込む。
- ポイント
-
回答が匿名化されているため、調査を受ける側は率直な回答を提供。
グループがお互いの知識と意見に基づいて構築できるように設計され、情報に基づき結果に合意に達した時にデルファイ法は完了となる。
外部調査会社を活用するという方法です。
費用は掛かりますが、筆者も良く活用していました。
計量経済学的手法 (Econometric)
- 特徴
-
販売データと需要に影響を与える外部要因を組み合わせて数値解析を行い、将来の需要を予測する手法。
- ポイント
-
経済要因間の関係を考慮し、将来の需要を数学的に予測する。
例えば、個人債務レベルの増加は、住宅修理サービスの需要の増加と一致する可能性がある、等。
新商品の需要予測10ステップ
需要予測は商品を企画するマーケティング側・商品を生産して販売するSCM側いずれにとっても非常に重要です。
需要予測部門はこの両者の間に位置する機能として、ストラクチャーホールと呼ばれ、実務は「需要予測部門(ない場合はSCM部門やマーケティング部門)」が担当することとなります。
ビジネス需要予測を行うには、大きく4つの情報が必要だと言われます。
事業計画、販売計画、マーケティング計画、過去の販売実績です。
特に新商品の需要予測をどのように行うかについては、海外サイト「The 10 steps of demand forecasting for new products」のステップが参考になるので、要約の上で流れを紹介します。
マーケティング、営業、運用、関連技術部門からの主要メンバーを特定し、コアとなるチームを作る。
需要計画から開発計画、生産計画への流れに活かせるまでの期間、管理を担当。
市場調査、市場テスト、バイヤーアンケートからの質的・量的データをレビューし、需要予測モデルの基礎となる前提条件を特定する。
前提条件は例えば以下のような内容
- ターゲット市場の消費者数
- 商品購入の割合(コンバージョン)
- 購入が予想されるタイミング
- リピート購入や切替購入のパターン
全ての消費者が同じペースで新製品を購入するわけではない。
地域別、市場別でどのように、いつ、どの価格で商品が購入されるかを反映する十分に粒度の細かい予測モデルを構築する必要がある。
新製品の場合最初の数日や数週間の売上は慎重にモニタリングする。
この期間の売上は、将来の需要がどのように成長するかを迅速に示すポイント。
一方で、財務部門や企画部門は月次の売上実績にしか興味を持っていない場合も。
月ごとではなく、最初の四半期くらいはデイリー、ウィークリーの予測を実際の売上と比較することが重要。
モデル内の様々な仮定や確率を変更しながら何度も反復を行い、様々な予測を作成。
リアルタイムで再計算できるモデリングソリューションが導入されていれば、社内の専門家や担当者が代替シナリオをその場で生成し、テストする。
立ち上げ直後の最も不確実な期間に在庫切れを防ぐために、複数のサプライヤーとの契約が結ばれる場合も多い。
しかし、補充ニーズを正確に再予測するために多くの手順が必要な場合、貴重な時間の大部分が水の泡になってしまう。
既存の在庫レベル比較や市場別の仮定条件を織り込んだ需要予測モデルを構築することで、愛予測のため時間ロスや補充のサイクルを短縮する。
購買意向に基づくボトムアップ・モデリング以外の需要予測方法を検討する。
テクノロジーや家電など、市場によっては、製品が数カ月でライフサイクル全体を終えることもあり、限られた機会の中で、需要を可能な限り正確に評価することは極めて重要。
こうした分野では、高度なモデリング技術を駆使し、代替率や普及率を用いて、新しい技術が古い技術に取って代わる速さを予測する。
異なる予測技術を組み合わせることで、より正確な結果が得られる、ということは需要予測分野での定説。
信頼性のあるデータが存在する場合は、常に予測を類似製品の販売推移と照らし合わせて、現実的かどうかを確認する。
同様に、新たな競合他社が新しいカテゴリに参入することで、市場シェアがどのように変化するかを推定することも重要。
販売や製品レビュー、メディアの言及、顧客フィードバックなどの定性的フィードバックを継続的にモニタリングし、モデルの仮定がどのように変更される必要があるかをチームのメンバーと合意する。
必要あれば、デイリーで再予測を行います。
製造業の需要予測 | よく使われる英語・用語集
製造業で需要予測に関連して良く使われる用語・英語とその意味を一覧にしました。
需要予測の代表的なモデルについても解説しているので、ぜひ目をとおして英語と一緒に覚えてしまうと便利です。
用語 | 英語 | 用語の意味 |
---|---|---|
KPI | Key Performance Indicator | 業績を評価するための指標。活動の実況状況を図るための数値 |
SCM | Supply Chain Management | 供給チェーン全体を効率的に管理するための手法 |
ストラクチャーホール | Structural Holes | 経営学で、異なる属性を持つ複数のグループ間の位置を指す(=ブローカー)。ブローカーはグループ間の違いやそれぞれの抱える課題、得意領域などに詳しくなるため、それらを活用した良いアイデアを思いつきやすく、組織において高いパフォーマンスを出すことができる |
ゲームプレイング | Game playing | 需要予測機能があるマーケティング・営業部門において、売上予算を持つというバイアスが発生すること |
需要予測担当者 | Demand Planner | 需要予測を行う人。商品供給を全体的に管理するSCM部門で需要予測を行うことが多い |
共同研究 | Collaborative Research | 複数の研究者や研究機関が共同で行う研究 |
研究開発 | Research and Development | 新しい製品やサービスを開発するための研究活動 |
オープンイノベーション | Open Innovation | 外部のアイデアや技術を活用して新しい価値を創出するイノベーションの手法 |
商品開発 | Product Development | 新しい商品を開発するプロセス |
宣伝広告 | Advertising | 商品やサービスを広く知らせるための活動 |
プロモーション立案 | Promotion Planning | 商品やサービスの販売を促進するための戦略を立案する活動 |
販売 | Sales | 商品やサービスを顧客に販売する活動 |
ロジスティクス | Logistics | 物流の管理と最適化を行う活動 |
サステナビリティ | Sustainability | 環境、社会、経済の三つの側面を考慮して、長期的に持続可能な発展を目指す考え方 |
財務 | Finance | 企業の資金繰りや投資、財務状況の分析などを行う部門またはその活動 |
在庫管理 | Inventory Management | 在庫の量を適切に保つための管理活動 |
製造 | Manufacturing | 商品を生産する活動 |
品質管理 | Quality Control | 商品の品質を一定に保つための管理活動 |
生産管理 | Production Control | 生産プロセスを効率的に管理する活動 |
原材料調達 | Procurement | 製品製造のための原材料を確保する活動 |
品切れ | Stockout | 需要があるにも関わらず商品が在庫切れとなる状況 |
過剰在庫 | Excess Inventory | 需要に対して在庫が過剰になっている状況 |
需要予測のずれ | Demand Forecast Error | 実際の需要と予測した需要との差 |
在庫回転率 | Inventory Turnover | 在庫がどれだけ早く売れていくかを示す指標 |
事業計画 | Business Plan | 企業の長期的な目標とそれを達成するための戦略をまとめた計画 |
販売計画 | Sales Plan | 商品やサービスの販売目標とそれを達成するための戦略をまとめた計画 |
マーケティング計画 | Marketing Plan | マーケティングの目標とそれを達成するための戦略をまとめた計画 |
過去の販売データ | Past Sales Data | 過去の販売実績を示すデータ。需要予測や商品補充量の計算などに使用される |
独立需要 | Independent Demand | 商品自体の需要を指す。対になる概念は従属需要 |
従属需要 | Dependent Demand | 商品を構成する原材料の需要を指す。対になる概念は独立需要 |
ノイズ | Noise | データ分析において、本質的な情報からの偏差や乱れを指す |
SKU | SKU (Stock Keeping Unit) | 在庫管理単位商品の種類やバリエーションを識別するためのコード |
精度 | Accuracy | 予測やモデルの正確さを示す指標 |
時系列分析 | Time Series Analysis | 時間の経過に伴うデータの変動を分析する手法 |
対前年比 | Year-on-Year Comparison | 前年と同じ期間との比較を指す |
Forecast関数 | Forecast Function | 既存のデータから未来の値を予測するための関数 |
季節性 | Seasonality | データが一定の周期で変動する特性 |
トレンド | Trend | データが示す長期的な変動や傾向 |
ホルト・ウインタースモデル | Holt-Winters Model | 時系列の変動にトレンドと季節変動を追加した指数平滑化法 |
指数平滑法 | Exponential Smoothing | 過去のデータに遡るにつれて、指数的に重みが減少する予測法 |
移動平均法 | Moving Average Method | 過去の実績データをもとに将来の需要量を予測する方法 |
seasonal-ARIMAモデル | Seasonal ARIMA Model | 季節性を考慮した自己回帰移動平均モデル(ARIMA: Autoregressive Integrated Moving Average) |
クロストンモデル | Croston’s Model | 間欠需要の予測に用いられるモデル |
因果モデル | Causal Model | 一つの変数が他の変数に影響を与える関係をモデル化したもの |
予測精度 | Forecast Accuracy | 予測の正確さを評価する指標 |
平均絶対誤差率 | Mean Absolute Percentage Error (MAPE) | 予測誤差の平均値をパーセンテージで表したもの |
売上加重平均 | Sales Weighted Average | 売上の大きさに応じて重みをつけて平均を取る方法 |
バイアス誤差率 | Bias Error Rate | 予測値と実際の値との差の割合 |
分布 | Distribution | データがどのように分散しているかを示す |
乖離 | Deviation | 予測値と実際の値との差 |
トラッキング・シグナル | Tracking Signal | 予測誤差の累積を追跡するための指標 |
多面的分析 | Multifaceted Analysis | 複数の視点からデータを分析する手法 |
セグメント | Segment | 市場を特定の基準で分割した部分 |
カテゴリー | Category | 商品やサービスを分類するためのグループ |
ブランド | Brand | 商品やサービスの識別可能な名前や記号 |
統計的分析 | Statistical Analysis | データを統計的な手法を用いて分析すること |
製造業の需要予測手法 | まとめ
今回は筆者が働く製造業で重要視される需要予測について、どのようなタイプ、どのような手法があるかを解説。
さらに10ステップの需要予測方法と合わせてよく使う用語・英語の解説をしました。
今回解説した需要予測を含め、日本ではまだ浸透していないけれど海外では進んでいる職務が多くあります。
ビジネス英語を使えるようになると、英語で仕事ができる以外にも、仕事で活かせる知識の幅も増えて、これまで以上に活躍の場が広がりますよ。
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今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。