海外赴任に必要な英語力ってどのくらい?
駐在で使える英語はどう鍛えたら良い?
今回は、そんな質問に海外駐在経験済、2社で海外営業・海外マーケティングに携わる筆者が解説します。
・TOEIC 960点
・BtoC、BtoBメーカー2社で海外営業経験
・途上国(英語圏)駐在経験あり
・英語に加えて現地語習得!
- TOEIC L&Rなら800点程度、TOEIC S&Wなら150点以上が海外赴任でそつなく業務できるレベル
- 日常会話レベルのTOEIC 600点は確実に赴任前に習得しておきたい。ビジネスレベルとしては700点目標
- ただし、英語力以外にも海外赴任に求められる能力が4つ!
「英語できない海外赴任者」と言われない英語力の目安
海外駐在で困らない英語力とはいったいどのくらいなのでしょうか。
「英語活用実態調査【企業・団体/ビジネスパーソン】2019」によると、以下のように定義されています。
海外出張や赴任の英語力基準
海外部門に期待するTOEIC L&R (Listening & Reading)のスコアは570点~810点。
TOEIC S&W (Speaking & Writing)のスコアは120点~160点とのこと。
この点数は海外出張レベルと海外赴任レベルを合わせた点数なので、この上限(L&Rなら800点程度、S&Wなら150点以上)が海外駐在で困らない英語力と言えそうですね。
日常会話レベル
英語は日常会話とビジネスレベルに分けて考えるべきです。
日常会話レベルというのはTOEICで表すと470点~730点くらい。
ざっくりTOEIC600点以上はほしいね、って感じでしょうか。
日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。
通常会話であれば、要点を理解し、応答にも支障はない。複雑な場面における的確な対応や意思疎通となると、巧拙の差が見られる。
PROFICIENCY SCALE (iibc-global.org)
仕事上で英語を必要としない場合でも、この程度の英語力は身につけておきたいところ。
英語圏の場合、このレベルの読む書く聞く話す能力がないと日常生活にも支障がでてしまう可能性があります。
以下の記事で具体的な会話レベルが確認できるので、時間があれば覗いてみてください。
ビジネスレベル
一方で、ビジネスレベル。
明確な「ビジネスレベル」という基準はありませんが、英語の能力を図る国際基準「CEFR」に照らし合わせると大体以下のような区分けができます。
・CEFR B1 (ビジネスレベル初級): TOEIC 550点~785点
・CEFR B2 (ビジネスレベル中級): TOEIC 785点~945点
・CEFR C1 (ビジネスレベル上級): TOEIC 945点~
まずは、ビジネスに関して基礎的な英語力を有するTOEIC 700点程度を目標にするといいでしょう。
以下の記事でもCEFRレベルごとの英会話力を聴くことが可能です。
海外赴任中に英語ができないと起こる問題
日常レベル・ビジネスレベルの英会話がないと起こってしまう問題について、筆者を含め周囲でどのような問題が起こっていたのでしょうか。
良くある事例を紹介したいと思います。
・販社・顧客に舐められる
・社内のコミュニケーション・日常業務に支障
・会社からの評価が低下
・日常生活がスムーズにいかない
・帯同家族が現地に馴染めない
販社・顧客にナメられる
最初の挨拶で「Sorry, my name is 〇〇. I am not good at speaking English. Nice to meet you.」って言いたくなりませんか?
日本人にありがちなSorryの多用や英語が下手ですという挨拶ですが、これやったらどんな職位であれローカルスタッフから舐められます。
ローカルスタッフは思いのほか派閥意識や昇進意識が強いので、誰についていくべきか、誰をこき下ろして自分が上に行くかを結構シビアにみています。
海外でれば人間関係の苦労なくなると思ってたけど普通に苦労しました。
社内のコミュニケーション・日常業務に支障
英語や現地語など、ローカルスタッフとのコミュニケーションが取れない状況だと、一つ一つの仕事に時間もかかり、ただでさえ多い駐在先の仕事が回らなくなります。
またローカルスタッフへの指示や報連相の吸上げもままならず、欲しい情報がタイムリーに入手できないことも、現地で運営する以上問題です。
会社からの評価が低下
会社が大きな期待の上で送り出した社員が、語学面でつまづき、上記のような業務への支障がでると、駐在前の高い評価が嘘のように下がることもあります。
筆者の周囲では、駐在前は国内営業担当として評価の高かった後輩が、英語力や積極性の無さからローカルスタッフと馴染めず、任期を終えず帰国・昇格試験にも落ちてしまったという例がありました。
本人が海外駐在を望んだとしても、海外駐在後に海外とかかわりのない部署に異動となることもあるため、できればこんな結果は避けたいところです。
日常生活がスムーズにいかない
特に筆者が住んでいた途上国では「ドライバー、ハウスキーパー、宅配業者」といった会社外の人とのやり取りやトラブル対応が日常的に発生。
先に述べた「日常会話レベル」の英語ができないと、こうした暮らしを支えるインフラが成り立たないレベルに陥るため、英語に対する拒否反応や消極的な姿勢は早期に解消する必要があります。
帯同家族が現地に馴染めない
家族全員が意思疎通問題なく英語を話せればいいのですが、多くの場合駐在者本人以外は英語に馴染みが無いでしょう。
そんな時、大黒柱のリードと行動力があってこそ、帯同家族も現地で生き生きと生活ができると思います。
駐在者本人の英語力が不足している場合、せっかく真新しい経験ができるチャンスにも関わらず行動範囲も狭まってしまうことも。
店員とのやり取り、電話対応など、日常会話レベルが早い段階でそつなくこなせることが大事です。
英語を使わない可能性もあり
ここまで言っておきながら、居住マンションで日本人コミュニティが出来上がっている、仕事で関わるメンバーが日本人しかいない、なんて状況も普通にあります。
希望する駐在先・決定した駐在先の人間関係については良く調べておきましょう。
海外駐在前の英語力アップ勉強法4選
海外駐在を会社から告げられた後、多くの会社では語学研修や異文化研修が組み込まれるのが一般的。
筆者の会社でも「サイマル・アカデミー」や「DILA 」など、駐在者の語学力別に振り分けられ、1-2か月くらいみっちり語学研修を行っていました。
今回説明する内容は、将来の駐在目指して英語力向上したい人や、海外駐在前の研修がほとんどない方におすすめですが、研修がある方でも補足的に学習できるのではないかと思います。
最低限の英単語で引き出しを作る
英単語について、大学レベルの英語語彙力が5000~6000語に対して、未知の単語なくスムーズに会話を行えるレベルが8000~10000語と言われます。
文法や読む力は日本の教育でそれなりの水準ですが、この単語力の目標と現実には大きなギャップがあり、まずはこの語彙力強化を積極的に行うべき。
英単語の学習な10万語を収録した英単語学習アプリmikanが長きにわたって筆者のお気に入り。
無料でも使えるアプリとは思えないほどの豊富な出題パターンに、英単語の定着を図る仕組みもたくさん。
これなら隙間時間の英単語学習がはかどること間違いなし。
TOEICに特化したアプリ
英単語と合わせて、TOEICに特化したおすすめのアプリは、スタディサプリ ENGLISH。
リクルート社が運営するTOEIC Reading対策ですが、テスト20回分相当の実践形式問題やPart1-7それぞれに対応した攻略法まで、TOEICのReading点数を上げたい方にはこれ以上ないサービス。
気になる方は、以下からサービスを調べることもできますよ。
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リスニングで英語を聴くことに慣れる
リスニングがなぜ大事かというと、英語を聴くことに抵抗がなくなるから。
私たち日本人はどうしても日本語の耳になっているので、英語に慣れた人でも「英語耳」と「日本語耳」をスイッチのように切り替えながら慣れていきます。
そんな時、英語を聴く習慣があるだけで、英語耳への切り替えが早くなるのです。
リスニングのおすすめ学習方法はPodcastでNHK WORLDやBBCニュースやTED Talksです。
自宅でじっくり勉強したい方にはAmazon Primeなどサブスクを利用して洋画(字幕版)やNHK Worldをみること。
好きなジャンル、テーマを選んで試してみて下さい。
英会話で英語を話すことに慣れる
海外駐在者向けの研修がある人でも、ない人でも、筆者が一番おすすめしたいのは気軽に英語を話す環境を作ること。
周りに英語を話せる人がいたり、会社の教育で英会話教室の参加を募っていたりすれば、ぜひチャレンジしましょう。
それが叶わない場合、オンライン英会話の選択も視野に入れてはいかがでしょうか?
今はコスパも良く、早朝や深夜30分から始められるようなオンライン英会話が一般的。
英語を聴き・話すことに慣れるという目標が達成できれば手段は関係ありません。
英語で話すのが恥ずかしいなんて気にしなくていいんです。
もっと手軽に取り組みたい方は、スタディサプリもおすすめ!
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たった数か月・数年で完璧になるのは無理
ネイティブスピーカーでもない限り、完璧に聞いて、発音するなんてできません。
日本に20年以上住んでいる時点で、耳は「日本語耳」。
発音や文法を気にせず、少しずつ「聞ける、理解できる、話せる」の引き出しを増やすだけで、ビジネスレベルには到達します。
まずは自分自身の目標とするレベルに対して、どこを磨くべきか学習していきましょう。
シャドーイング・ディクテーション
シャドーイングやディクテーションはとても大事で、英語力向上には役立ちますが、英語初心者にとって優先度としては低いかもしれません。
ある程度英語を聴いて理解できる、どんな単語の繋がりを話しているか理解できる状態であれば効果は抜群ですので、積極的に取り入れていきたいです。
海外駐在には英語力+αが大事
英語の学習は大事ですが、筆者の経験からそれ以上に大事だと思うことが以下の4点。
溶け込む力
現地の文化(衣食住)に溶け込む力やヒトに溶け込む力を指します。
特に多いのが、現地の食べ物を出されても嫌な顔して断る、催し物への参加拒否、日本人だけでつるむ、という状況。
こういった部分に積極的に飛び込むことで、どれだけ仕事がやりやすくなるか!
筆者もたくさん食べて、踊って、駐在した国のFacebook友達が500人くらいできました。笑
筆者自身、海外駐在をして良かったと思えるのも、積極的に現地の文化や人に溶け込んだことがNo.1の理由です。
傾聴力
そのまま聞く力、共感する力です。
日本人はつい先入観や人のうわさを頼りにして、相手が話すことの真意を理解しない傾向があります。
時間がかかっても相手のいうことを理解しようとし、問題を相手に話してもらうの繰り返しで信頼関係が生まれます。
判断する力
日本以上に自分自身で裁かなければいけない仕事が多い海外駐在。
その中でも、自分の組織の運営を左右するような判断、人の配置、仕事を振る相手といった決め事を、納得感もって判断することが重要。
八方美人の態度は日本人からも現地スタッフからも嫌われるので、自分のポジションやポリシーを決めて、それに従った判断が求められます。
日本にいるときから意識したいポイントですね。
専門性
海外駐在でローカルスタッフから期待されるのは、日本で手腕をふるってきたその経験や専門性です。
海外と日本をつなぐだけの仕事にならないよう、自分自身の経験や専門性を発揮して仕事に取り組むと、ローカルスタッフとも早期に信頼しあえる関係になるでしょう。
海外駐在する前から、自身が何に詳しいのか、どんな専門性で現地に貢献できるのか整理しておくといいかもしれません。
海外駐在に必要な英語力と勉強法4選|まとめ
今回は、海外駐在で困らない英語力と勉強方法について、海外駐在経験のある筆者が解説しました。
最後に今回の内容を簡単にまとめてみたいと思います。
・TOEIC L&Rなら800点程度、TOEIC S&Wなら150点以上が海外赴任において、そつなく業務がこなせるレベル
・日常会話レベルのTOEIC 600点は確実に赴任前に習得しておきたい。ビジネスレベルとしては700点目標
海外駐在を目指すあなたが考える英語学習の優先順位は以下の通り
残念ながら、仕事として海外で暮らす場合、高い英語力だけでは仕事が回りません。
英語力と同じかそれ以上に大事なこと
・溶け込む力
・傾聴力
・判断する力
・専門性
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。